ringomusume 退屈へのレジスタンス
「NEGiFES」は新潟を拠点として活動するアイドルグループ、Negiccoが主催する音楽フェスティバルであり、2015年から毎年開催されている。最初は恵比寿のリキッドルーム、その次からは所沢の航空公園で行われたが、2017年からは新潟の北方文化博物館で行われてきた。Negiccoの他に様々なアーティストやアイドルが出演し、新潟の味覚も楽しめる素晴らしいイベントだと聞いている。というのも、毎年、週末に行われるこのイベントは、常に私の仕事と重なってしまうために、これまで一度も行ったことがないのだ。
今年は新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から、このイベントが無観客配信ライブとして行われることになった。とはいえ、やはり週末なので、仕事と重なってしまったわけだが、数日間はアーカイブで視聴できるということだったので、配信で録画とはいえ、ついに念願の「NEGiFES」を初めて観ることができるぞ、という気分になっていたのだった。
出演はNegiccoの他に、RYUTistとringomusumeということであった。RYUTistはNegiccoと同じく、新潟を拠点として活動するアイドルグループで、今年は「ファルセット」という素晴らしいアルバムをリリースしたばかりということもあって、ノリにノッているのではないだろうか。ringomusumeについては不勉強のためよく知らなかったのだが、おそらくどこかの地方のアイドルグループなのだろうということは、なんとなく想像ができた。
アーカイブを視聴するまで、すでに行われた「NEGiFES 2020 ONLINE」についての情報はなるべく入れないようにはしていたのだが、やはり入ってくるし、気になって見てしまう。概ね大絶賛という感じであった。仕事から帰宅した後で視聴することもできたのだが、これは休みの日に心身共にベストコンディションで観ようということになり、それが叶ったのは10月6日の火曜日であった。イベントが行われた日の3日後であり、アーカイブ視聴ができるのはその日限りということであった。
3時間以上にも及ぶコンテンツということで、やはり休日にベストコンディションで観ることにして正解だったと思ったのであった。
このイベントにはいくつもの協賛企業があり、そのCMも流れるのだが、東京のテレビではおそらく観ることができない、Negiccoが出演するローカルCMも多く、なんだかとても得した気分になった。サトウのごはん、大光銀行、水原自動車学校、東新潟自動車学校、エースコックのうまさぎっしり新潟シリーズなどである。Negiccoは出演していないのだが、肉屋愛心という企業のCMも流れ、男前でカッコいいと思った。
それはそうとして、ringomusumeである。4人組グループで、楽曲はわりとおしゃれ、なるほどNegiccoのファンにも受け入れられそうな、いわゆる「楽曲派」向けのグループなのかなと思って視聴していると、サウンドにどことなく和のフレーバーも感じられる。歌詞に「ねぶた」というワードが入っていることから、青森のアイドルグループなのだと理解した。また、メンバーは入れ替わっているものの、実はかなりの長いキャリアを持つグループなのだということも分かり、驚かされた。
MCがはじまると、メンバーが地元訛りのままやっていることが分かりとても親しみが湧いた。また、メンバーの名前がユニークだなと思って聞いていると、最後に自己紹介をしたメンバーがジョナゴールドで、なるほど、林檎の品種から取っているのかと理解した。「焼きりんご」という曲が昭和歌謡テイストで、強く印象に残った。また、「JIGA-JIGA」という曲についての説明で、青森の方言で炭酸飲料のことを「ジガジガ」と呼ぶことを初めて知った。また、炭酸飲料を飲んだ時のシュワシュワする感じのことは、「ジガジガする」というらしい。この曲は「会いたいよ」というところの切ない感じが、とても良いと思った。
「トリプル!WONDERLAND」でNegiccoとコラボレートしていて、とても良かった。
RYUTistは「ファルセット」に収録された曲を中心としたセットリストで、とても良かった。みくちゃんこと横山実郁のナチュラルボーンアイドル的な資質はかなりのものなのだが、この日のステージでは、前髪パッツンと呼ばれるような髪型と、目が普段よりも大きく見えるようなメイクによって、それがまたとても良い感じに発揮されていた。
「ナイスポーズ」は学園生活のなにげない一瞬、あっという間に忘れ去られてしまいそうだが、実はとても素晴らしい時間のことを記録した素晴らしいポップソングだが、ライブで視聴すると、これがまたさらに良くて、不思議と泣いてしまいそうになるのはいかんともしがたい。
「ずっと考えてくれてたの?」というところが、この年齢になってもいまだにサプライズ好きをこじらせていて止まらない私のような者からしてみると、グッときてたまらないのである。そして、レコードでは作者の柴田聡子が言っているという、「ヘイ!ヘイヘイ!」というかけ声も、なんだかとても良いこういう気持ちのことを忘れたくはないし、忘れずにいることはとても素敵なことなのだと、この曲を聴いて感じることができた。
「好きだよ」という曲は「ファルセット」収録曲の中でもおそらく好きな人が多いのではないかという気がするのだが、個人的にはあまり好みではないタイプの曲である。しかし、この曲におけるともちぃこと宇野友恵のエモーショナルなボーカルには、カタルシスすら感じなくもない。
Negiccoとのコラボレーション曲は、RYUTistからのリクエストで、「Falling Stars」であった。Negiccoにとっては初期の楽曲であり、新潟の古町について歌われている。「Falling Stars」で「星のふる町」で「古町」というわけである。RYUTistはNegiccoと同じ新潟の、特に古町を拠点として活動しているということだが、意外にもこれまでそれほどガッツリとは絡んでいなかったということで、これは良い機会になったようである。
Negiccoファンのかなりの割合が必然的に新潟ファンにもなるわけなので、このコラボレーションはとても良かったのではないだろうか。
そして、ときめきのヘッドライナーは、もちろんNegiccoである。やっぱり良いものだなと改めて感じたのだが、今回は曲の中にRYUTistとringomusumeの曲の一部を入れていたりもして、プレミア感もあったのである。個人的に大好きな「江南宵唄」もやってくれたし、この曲からの最新シングル「午前0時のシンパシー」という流れもまた良かった。
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最後に出演者全員で「圧倒的なスタイル」でラインダンスというのも、やはり良いものだな、とまた感じていた。「さよならMusic」とかもそうなのだが、もうなんというか、ローリング・ストーンズの「スタート・ミー・アップ」「ブラウン・シュガー」「サティスファクション」とか、そのぐらいの安定感というか、お約束でもあるのだが、やっぱり良いなという感じが溢れすぎている。
Negiccoを知っていることで、明らかに人生が何割かは楽しくなっているよな、ということを再認識させられた配信であった。